20度を超える初夏のようなお天気が続いています。
マロニエの花も満開で、ふわふわした綿毛が街中を飛び交っています。
さて、今回のパリ便りでは世紀末のパリ芸術家村、モンパルナス地区にある「ブールデル美術館」にて開催されているの「マダム・グレ回顧展」をご紹介します。
ブールデルは19世紀末の彫刻家、ロダンの弟子でありジャコメッティやマイヨールの師でもありました。
大胆で豊か、力強い彫刻で有名ですが、
彼の残した作品で誰もが知っているのは「ベートーベンの胸像」、
日本でも学校の音楽室などに飾ってありますね。
ここはブールデルの当時のアトリエを残しながら建物をモダンに作り替えた美術館です。
この館内で「マダム・グレ」のコレクションとデッサン展を開催しています。
「マダム・グレ」、
日本ではシャネルのように知名度の高いクチュリエール(ファッションデザイナー)ではありませんが、
数あるフランス・メゾンの中でも特別にエレガントなメゾンとして知られています。
「マダム・グレ」はいわゆるブランド名、クチュリエールの名は「ジェルメーヌ・エミリ・クレブ」、
1903年フランス生まれ、彫刻家を目指して家を飛び出しパリで勉強後、
当時の状況から芸術家を断念し、そのかわりドレープを生かした服で「布の彫刻」と言われるドレスを作り出した女性です。
透徹した美意識と技術でフランスのオートクチュール界に金字塔を築き、
イブサンローランを始め多くのクチュリエから師と尊敬を受けていました。
数々のドレスがブールデルの彫刻の中に配されています。
中庭にも彫刻が...
ブールデルの19世紀のアトリエがそのまま残されています。
これは「マダム・グレ」のスペシャリティの一つ「プリーツ」ドレスです。
まるでギリシャ神話の神々がまとっていたような衣、1920年代の作品です。
このプリーツ技術は不可能と言われるテクニックを使ったもの、
今でも成し遂げたクチュリエはいません。
美しいデザインは時代を超えた美意識、全てオートクチュールです。
ブールデルのアトリエ内は当時のまま、彫刻や机がところせましと置かれています。
彫刻に上手に合わせたディスプレイには感嘆するばかり...
今でも来てみたくなるような洋服は1940年代のもの、
フランスらしい色使いが素晴らしいですね♪
そして、「マダム・グレ」は孤高の人、
芸術家肌のクチュリエール、
あまり多くは話さないけれど一言が重みを持っていた、と当時を知る人は言います。
映画評論家の秦早穂子さんが書かれたご本にこのような一文があります。
「自由奔放な才能は前衛的ですらある......純粋な美しさを支えるものは技術的にも複雑かつ単純なのだ.......しかし最も感じ入ったのは、作品と人柄が一致していることだった。超越してしまった独自の美の世界は、彼女の生きる態度と同じなのである。」
そして「彼女の服は母娘2代で着る」ということも。
本当に美しいものは時代を超え、作り上げた人の生きる姿勢を表す、ということをあらためて感じさせられた回顧展でした。
この展覧会の作品群は、昨年亡くなったイブ・サンローランのYSL財団が購入し、パリのガレリア服飾美術館へ寄贈したものが初公開されました。
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ブールデル美術館内 「マダム・グレ回顧展」 ~ 2011.7.24まで開催中
紹介されている
HP
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マリールイーズからのパリ便り Vol.35 2011.4.22
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Musée Bourdelle ブールデル美術館
所在地:18, rue A. Bourdelle-75015 Paris France
メトロ Métro: Montparnasse-Bienvenüe
Tel: 01 49 54 73 73
Fax: 01 45 44 21 65
Tous les jours sauf lundi et jours fériés
de 10h à 17h40 月・祝日閉館