〜メールマガジン Vol.11より〜
パリのあちこちで見られる小さな泉。
夏の暑い日、ペットボトルへ注いでいる人や、散歩の愛犬にも飲ませてあげている人などに出会います。
水は上の丸屋根から女神達の中央に向かって絶えず流れ落ちています。
この泉、実は19世紀のイギリス紳士からの贈り物なのです。
イギリスの大富豪、フランス芸術とパリの街が大好きな紳士、ムッシュ・ウォレス(イギリスではサー・ウォレス)はフランス芸術収集家として世界に名を馳せた人物でした。
パリでは17世紀の貴族の館に住み、ロンドンと往復した日々。
パリに恋し恋い焦がれ、なんとか自分の軌跡を残したいと熱望し、ある日パリ市長へ一つの提案をしました。
「パリの街を散歩するとき、ロンドンと違い乾燥するのでちょっと水を一杯、と思うことが多いのです。
そこで街の至る所へ飲み水専用の小さな泉を作っては如何でしょう?
きっとみなさんも喜んでくださると思いますし。。。これは私から、愛するパリへの贈り物として捧げたいと思います。」
パリ好きが高じて、こんな泉をパリにプレゼントしたムッシュ・ウォレス。
「フォンテーヌ・ウォレス(ウォレスの泉)」と呼ばれ、今も当時そのままのデザインで大切に受け継がれています。
それにしてもなんとも気の利いた贈り物ですね♪ これでムッシュ・ウォレスはパリに名を残したのです。
しかしパリ市はお礼にと、小さな勲章ひとつを贈ったのみでした。
また、彼はロンドンへはコレクションを邸宅と共に「ウォレス・コレクション」として贈りました。
パリがもう少し彼を大切にしていたら、今頃はパリの館で彼の素晴らしいコレクションを観賞できていたかもしれません。
*London「ウォレス・コレクション博物館」
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