暦の上では秋は始まっていますが、まだまだ暑い日々が続いていますね。
パリはセーヌ川沿いの木々が、心なしか乾燥し枯れはじめているよう、気分はすっかり秋ですがまだ強い陽光がさしています。
さて今回は「シテ・ド・ラ・モード館」で開催された「
クリストバル・バレンシアガ展 」をご紹介します。
パリ市の東端、セーヌ川の南側のこの鮮やかなグリーンの建物がシテ・ド・ラ・モード館、
今年の4月13日にオープンしました。
コンクリートと鉄骨製のモダンな建築で、船をイメージしたそう、
通称
「レ・ドック」、つまり「船の甲板」と呼ばれる建物です。
壁が無く開放的で、本物の甲板を使っています。
ここからのセーヌ川の眺めは、高層ビルが建ち並びパリとは思えません。
それもそのはず、このあたりは昔はパリ市ではなく郊外でした。
2000年以降に開発が進み、今では官庁や会社などのビルが建ち並ぶ地区になっています。
このあたりにくると、パリというより世界共通の都市の印象です。
こんなモダンな場所で、クラシカルなモード展ががありました。
まず、今回ご紹介する「
クリストバル・バレンシアガ 」について少し触れてみます。
バレンシアガは、19世紀(1895年)生まれのスペイン人、
若くしてスペインのファッションデザイナーとして成功していましたが、内戦で30年代にパリへ逃れてきました。
パリの中心ジョルジュ・サンクへサロンを開き、才能を開花させ、1968年に引退するまでパリで仕事をします。
そして、1972年にパリで亡くなりました。
終世スペインの熱い血を忘れなかったデザイナーで、その構築的なドレスで「
モード界の建築家」と呼ばれていました。
今回は、彼のプライベート・コレクションのアンティークの衣装と、彼のドレスを展示しています。
興味深いのはデザインのインスピレーションとなった18〜19世紀の古い洋服や小物のコレクション、
これらは彼の亡き後、遺族がパリのファッションの殿堂「
ガレリア美術館」へ寄贈したもの、
現在ガレリア美術館は修復中で2013年春まで閉まっていますが、キューレーターが毎年ガレリアのコレクションの中から選び、別の場所で展覧会を催しています。
去年は
「〜 マダム・グレ 布の彫刻師・・・ブールデル美術館にて 〜」 が開催されました。
では、続いて展覧会をご覧下さい。
今回の展示は、ガレリア美術館のコレクション保管場所の「倉庫」をイメージしたそうです。
最初にスペイン人らしい「黒」を基調にした重厚なファッション、
1950年代の夜会服に、
バレンシアガ直筆のデッサン、
立体的なつくりは通称
「モードの建築家」ならではです。
実物、
ふくれ織りの豪華な生地を使っていますね。
これは彼のコレクションの19世紀のマントです。
古い洋服にインスピレーションを受けて作られたケープや帽子、
前身にガラスビースが刺繍されたドレス、
これは50年代のバレンシアガのデザイン、
こちらは19世紀のフランスのケープです。
どちらがどちらの時代か、判らない位綺麗に作られた衣装です。
下は19世紀、ナポレオン3世時代のモード雑誌、
創作のインスピレーションだったのですね。
たしかに、素材感やディティールが似ています。
こちらはガラスビーズの刺繍、パリの工房の刺繍師がバレンシアガの為に作りました。
続いて反対側は、パステルカラーのドレス、
50〜60年代のバレンシアガの作品です。
下の長い帽子は「ウェディング用」だそう、
ヴェールを細かい麦わら帽子で作り上げたセンスが素敵ですね。
デザイン違いのウエディングヴェール風ハットのモデルです。
構築的ですね!
カラフルな刺繍のドレスもありました。
このような刺繍は
いにしえの刺繍ショール の影響です♪
こちらはスペインの古い民族衣装の帽子と、彼のデザインのケープです。
スペイン人のバレンシアガはいにしえのスペイン芸術からたくさんの影響を受けています。
例えばこのドレス、
有名なベラスケス作のスペイン王女の肖像をイメージしているそうです。
こちらは50年代の夜会服、
絹地に細かいビーズや金属片の刺繍は、
次のページにご紹介するようなアンティークの生地を参考にして作られました。
→ 〜 クリストバル・バレンシアガ展〜後編へ続く 〜
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by Lettre-de-Paris
| 2012-07-26 15:08
| パリ便り
ビーズや金属片の刺繍は、↓ このような19世紀の司祭の衣装や、
18世紀の細かいビーズ刺繍を参考にしていたそうです。
これは靴でした。
先の尖ったヒールが10cmはありそうなもの、現在にあっても素敵なくらいですね。
こちらも手刺繍のドレス、
バレンシアガのコレクションであった19世紀フランスの男性用ジレ(ベスト)です。
白い方は刺繍ではなく大変細い糸の精緻なリネン織物、
バレンシアガデザインの靴、
まるでアンティークドールが履くような19世紀の靴そのものですね♪
こちらは絹地へ細かい細かい手刺繍です。
こちらは、「
モード界の建築家」と言われた由縁のドレス、
モデルが着ると、
張りのある絹地で作られており、四方に飛び出したようなデザインです。
まるで折り紙の様ですね。
彼のアンティークコレクション、
教会で司祭が肩にかける19世紀の刺繍入りリボンです。
ほんとうに、倉庫の雰囲気満載で、
冷たくそっけないコンクリートやアルミ、ガラスの素材感と、
手仕事を駆使した重厚な洋服のコントラストが印象的です。
普通なら、クラシックな古い館のようなところで催したくなるような展覧会ですが、
このような思い切った選択が、新しい美意識を生み出すのですね♪
なにも飾りの無いところに置かれたために、
クラシックなコレクションが、かえってその存在感を増しているよう、
バレンシアガのメゾンは、現在もフランス人デザイナーによって存続していますが、
やはりオリジナルの
クリストバル・バレンシアガにかなう物はないよう、
ピカソの絵画、「アルルカン(ピエロ)」をモチーフにしたドレスや、
闘牛士タッチの帽子も、
スペイン文化を洗練されたクチュールに仕上げた感度は本当に見事でした。
衣食住のうち「衣」は最もサイクルが早く人々の生活を如実に表す、と言われますが、
当時の「衣」を見ると、その時代の人々の生き様や感性までが見えてくるようです。
スペイン出身らしい、ドラマチックで重厚な「衣」をつくったバレンシアガの稀少な展覧会でした。
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シテ・ド・ラ・モード館 Cité de la Mode et du design
所在地:34 quai d’Austerlitz 75013 Paris
メトロ:Gare d’Austerlitz, Quai de la Gare, Gare de Lyon
www.paris-docks-en-seine.fr
開館日:火〜日 10h00~18h00
クリストバル・バレンシアガ展 2012/4/13~1012/10/7
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つい先日、日本の高校生の間で万年筆が人気、の新聞記事を読みました。
新しいしかっこいい。力のかけ具合で文字に味が出る、パソコンでは絶対無理、というコメントに思わずホッとしたのは私だけではないのでは?
20数年前、インターネットやパソコンが一般化し始めた頃、これでこれからの子供達はきっと手で書く作業がもっと減ると言われていました。
フランスはと言いますと、以前よりも需要は減っている様ですが、まだまだ手紙文化の社会、
今でも万年筆は大切な筆記用具の一つです。
クラシックなものから、綺麗な色やデザインなど種類も豊富で、
筆記用具店では、綺麗にディスプレイされた万年筆は、ショーケースの王様然としています。
フランス製だけでなく、イタリアやイギリス製など素敵なデザインがありますし、日本のものも人気です。
そして公私ともに、何でも手紙を送らないと受け付けてくれません。
例えば引っ越す時、アパルトマンの大家さんには文書で知らせ、相手も文書で承諾したことを送って来ます。
たとえ同じ建物に住んでいても・・・です。
インターネット回線の変更手続きも手紙ですし、電気やガスの解約依頼も手紙を出さなければなりません。
普通郵便で出しますから、
本当に期限まで着くのかしら? 間違ってなくなったりしないかしら?・・・と、
フランスの郵便局は荷物がきちんと届かない事が多いため、いつも心配になりますが、不思議と無事に届いています。
ネットの契約を手紙で解約なんて本末転倒な気もしますが、いずれもメールに電話、口頭では受け付けてくれません。
手紙の中では特に手描きが一番格上とされ、
著名人の古い手紙のコレクターや、手紙博物館まであるくらいです。
古い手紙では、ナポレオン1世が皇后へ送ったものや、ルイ14世への支払い要求の手紙など時代を映す面白いものもあり、そんな手紙は古書店やオークションで取引され中には数千万円という価格がつくものもあります。
有名な筆記では、18世紀のフランス王、ルイ15世のサインは、大きく流れるような文字で 「 Louis 」 と記され、羽根ペンが作り出す凹凸がとても美しいものです。
それにしましても最近は、インクで書いたように見えるボールペンなども出て、とても便利ですね。
それに比べ、インクが染みたり、乾くのを待ったり、インクを入れ替えたり、磨いたり・・・と万年筆は時間と手間がかかります。
でもそういう風に時間をかけて書いた手紙をいただいたら、とても嬉しい気持ちになります。
古今東西、人の手が作り出す物はいつの時代もゆったりとした優しさがともないますね、
最近は便利なペンにばかりついつい手が伸びていましたが、万年筆を取り出して、インクを入れて使ってみようと思いました。
・------ murmure "ミュウミュウ" とはフランス語で "つぶやき" のこと ------・
マリールイーズからのパリ便り Vol.43 2012.8.23
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by Lettre-de-Paris
| 2012-07-26 13:49
| パリ便り
レンギョウの黄色が爽やかなパリ、 桜も綺麗に咲いています。
でもまだまだ空気は冷えて、薄手のコートやストールも欠かせません。
さて今回は、17世紀の雰囲気たっぷりのマレという地区にある美術館をご紹介します。
古い石造りの邸宅が建ち並ぶ一角に「カルナヴァレ美術館」があります。
16〜17世紀に建てられた貴族の館で、大きな門構えが印象的です。
中は17世紀的なインテリア、
白黒の格子がルネサンスです。
今はパリ歴史美術館として公開されており、16〜18世紀の美術品を展示しています。
古い時代の王侯貴族達の肖像画も素晴らしいのですが、
5mはある梁の美しい天井や石造りの内装が、17世紀のゆったりとした静かな美を伝え、
当時の雰囲気の中に入り込んだように思えるのが魅力です。
傾斜の少ない階段は、人間を中心に考えたルネサンス期ならでは、
とても歩きやすいものです。
当時の暖房は暖炉のみ・・・
どれも豪華な飾りです。
壁の色彩塗りは当時のまま、
絹地張りの壁は修復されたものですが、雰囲気を壊さない素敵なセレクションです。
美しい天井画の部屋がありました。
こちらはサロン、
17世紀の貴婦人達、
階段の白さに目が奪われました。
窓から見える庭は、
夏には薔薇園になります。
壁画や彫刻も時が止まったよう、
今にも肖像画の貴婦人達が降りて来そうな館でした。
*カルナヴァレ美術館
http://carnavalet.paris.fr/
http://carnavalet.paris.fr/en (英語)
所在地:23, rue de Sévigné 75003 Paris
10h00-18h00 (17h15入館終了)月曜休
メトロ:Saint-Paul ( 1番線) 又は Chemin vert ( 8番線)下車
バス:29, 69, 76, 96番に乗車
・------------------------- マリールイーズのmurmure -----------------------・
先日書店で白とグレーの静謐な表紙に惹かれ、
「 Vilhelm Hammershøi 」とい19世紀から20世紀初頭に生きた、デンマークの画家の画集を求めました。
日本ではウィルヘルム・ハンマースホイと読むそうですが、
フランスではヴィレルム・アメーショイ、
母国デンマークではなんと読むのでしょうか?
コペンハーゲンに生まれ、パリにも滞在し、オルセー美術館にも作品が残されています。
ハンマースホイの絵の魅力を一言で言いますと、
モノトーンの光の世界、
白や墨色で描いた窓や揺れるカーテン、
窓から入ってくる、緯度の高い北欧らしい繊細な太陽の光、
黒のドレスにつつまれた婦人達、
わずかに使われた色は、渋いイエロー系・・・と徹底したスタイルのある画家でした。
なにもない、室内のドアや光を描いただけの絵、人物は後ろ向きや横顔、下を向いている・・・と当時はクラシック絵画の基準に合わなかったため、画壇の評価は低く、
20世紀末になりやっとその魅力が人々に知られ始めたそうです。
画集をめくりますと、
デンマーク独特の静けさや、こぼれる光、愛した家族の肖像・・・
1世紀以上前の絵からも、部屋の温度や匂いまで伝わって来ました。
なにかを訴える積極的な絵ではなく、見る人に考えさせるような、
絵の世界から想像がどんどん広がって行く・・・いつまでも見ていたくなるような不思議な魅力をもった絵でした。
デンマークは歴史があり、妖精や古い教え、アンデルセン物語などを沢山持っている国、
ノルマン人のヴァイキングがヨーロッパ中に出かけたり・・・しかし歴史の中では厳しい時代が長く、それが早くから平和を祈った国作りとなったようです。
また王制も続いていますね。
近い様で遠い、知っている様で知らない国、の一つです。
1冊の画集から新しい興味が広がって行きました。
・------ murmure "ミュウミュウ" とはフランス語で "つぶやき" のこと ------・
マリールイーズからのパリ便り Vol.41 2012.4.20
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by Lettre-de-Paris
| 2012-03-09 18:53
| パリ便り
今回は17世紀から続いているパリのお茶の店をご紹介いたします。
フランスはカフェ文化が定番、のイメージですが、実はとても古くから続く紅茶のメゾンがあります。
ところはパリ4区の「マレ」と呼ばれる地区、
マレ、とは「湿地帯」のこと、
昔はこの辺り一帯が沼地だったのでそう呼ばれています。
今でも湿気の多いところで、雨が降ると他の地区よりもなんとなくしっとりしています。
そのマレ地区の中央にある「ヴォージュ広場」の回廊にお茶の店はあり、
名前は「 ダマン・フレール DAMMANN Frères 」、
17世紀にルイ14世王御用達となったエピスリー(香辛料)商人、「ダマン氏」が発祥だそうです。
ダマン氏は王様から香辛料や茶葉の注文を受け、インドとパリを往復した商人で、
当時の香辛料や茶葉は金と交換したという位高価なものでした。
18世紀に「ダマン商会」はオランダ人の手に渡り、19世紀に再びダマン家兄弟が買い戻し、今に至っているとのこと、
紅茶といえばイギリスが定番ですが、
ダマン氏が王の命令でインドを往復したのは17世紀、当時はフランスとイギリスがインドとの貿易をどちらが担うか争っていました。
18世紀、フランス宮廷ではカカオ(カフェ)が流行しましたが、19世紀中期のナポレオン3世時代に再び紅茶が流行、
18世紀、フランスでは王侯貴族しかお茶やカカオを飲めないくらい高価な舶来品でしたが、
「ダマン・フレール」は19世紀に多くの人々にお茶の美味しさを紹介しました。
こんな風に歴史ある専門店が続いているのですね♪
エキゾチックな店内はお茶の香りで一杯、
チェッカー模様のパッケージも素敵♪
天井は17世紀の梁をそのまま使っていて・・・いにしえの雰囲気溢れるお店です。
このお店のある「ヴォージュ広場」は1612年にアンリ4世王が作ったところ、
パリ最古の広場です。
ベーシックな茶葉から、オリジナルの香りまで200種類近くのセレクション、
紅茶にあうサクサクしたオリジナル・サブレも美味しそう♪
日曜日も開いていますので、週末はパリジェンヌで一杯でした。
パリのお店の人が、日本でダマン・フレールが買えるところを紹介してくれました。
よろしかったらお試しになってみて下さい。
ダマン・フレール・ジャポン
こちらはフランスのHP、フランス語ですが雰囲気だけでもご覧になってみて下さい。
ダマン・フレール・フランス
パリのお店はこちらです↓。
ダマン・フレール
所在地:15, Place des Vosges 75004 Paris
休業日無し・11h-19h
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by Lettre-de-Paris
| 2012-01-30 23:56
| パリ便り
2月の声を聞く頃、外は北風が吹いていても気分は春、お天気の良い日には出かけたくなりますね♪
今回は伝統菓子とサロン・ド・テの「 カレット Carette 」をご紹介します。
場所はブルジョワ・ファミリーのパリ16区、トロカデロ。
さて、メトロを降りるとトロカデロ広場で沢山のカフェがあります。
その中心にあるのが「カレット」、
1927年から続いているサロン・ド・テです。
寒くても外のテラスで・・・はパリの定番、コートを着込んでランチタイム、
目の前のトロカデロ広場には「シャイヨー宮」があり、博物館と映画館で
エッフェル塔もすぐそこです。
ここはパリジェンヌ、パリジャン達の待ち合わせ場所になっているようです。
そしてここが「カレット」、
テラスの籐椅子が昔ながらのフランス♪
中はガラス天井で開放感でいっぱいです♪♪♪
奥にはお菓子がずらり、、、今大流行のマカロンをはじめ、フランス伝統菓子が並んでいます。
もちろんテイクアウトもOK、
店内はとなりの人と触れ合う程、テーブルの間隔がとってもせまく
これもとてもパリらしいサロン・ド・テです。
香り高いカフェや紅茶と一緒に甘いものをほおばっているおじいさま、
パパにケーキを食べさせてもらっている男の子、
ここは老若男女、お菓子とカフェが大好きな地元の人々の憩いの場所なようです。
そしてパリ4区のマレ地区にも2店舗目のサロン・ド・テがあります。
こちらが2店舗目のテラス↓
ここは日曜も開いていますので、とても便利なところです。
お菓子のバリエーションは
こちらのカレット Carette 公式HP をご覧下さい♪
= カレット Carette =
住所:4 place du Trocadero - 75016 Paris
メトロ:6・9番線:Trocadero(トロカデロ)下車
Phone: 01 47 27 98 85
Fax: 01 47 27 26 09
営業時間 7:00~24:00
定休日 無休
・------------------------- マリールイーズのmurmure -----------------------・
2012年最初のパリ便り、楽しんで頂けましたでしょうか?
今年始め、偶然読み返した作家、須賀敦子氏の著作にウンベルト・エーコの話があり、彼の著作をじっくりと読んでみることにしました。
まず最初に、1987年に映画化された「薔薇の名前」から・・・映画では007で有名なショーン・コネリーが主役のウイリアム修道士を演じています。
監督はフランス人、ジャン=ジャック・アノー。
友人からは映画よりも小説の方がずっと深いよ、と言われわくわくしながら読み進めました。
実際の撮影はさまざまな場所で撮ったそうですが、
小説の舞台となった僧院は北イタリアの「ボンボーザ」と中南部フランスの「コンク」との間、
とあいまいにされています。
この一帯には10世紀から11世紀にかけてのロマン(日本語:ロマネスク)様式の素晴らしい修道院が沢山残っているところ、
どこも列車は通じていず、山の上や森の中、人里離れた小さな村・・・といつか車でゆっくりと修道院巡りの旅をしてみたいと思っている地域です。
中世以前は「国」という考え方が殆ど無い時代でした。
この小説の舞台となったあたりも、フランスとイタリアの国境はあいまいで、強いて言えば文化圏で統治が分かれていました。
その文化とはキリスト教、修道院や教会を中心に社会が形作られていました。
この小説には中世の僧院長と王侯のやりとりや、美しく珍しい写本を収めた文書館がでてきます。
印刷技術が発明された15世紀以前、
今では想像を絶する時間と手間をかけて修道僧が書物を写本し、1冊の書物がまるで宝石のように扱われていました。
「薔薇の名前」を読みますと、そのころの人々の暮らしや心に触れ、
今とどちらが人間的だったのか、発展とはなにか・・・と考えさせられました。
年の初めに「今年は手と心を丁寧に使った日々を送れるように・・・」を2012年の基軸に・・・と思った小説と出会いました。
・------ murmure "ミュウミュウ" とはフランス語で "つぶやき" のこと ------・
マリールイーズからのパリ便り Vol.40 2012.2.6
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by Lettre-de-Paris
| 2012-01-10 01:15
| パリ便り